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今年のフォーラム

Osaki Midori Forum in Tottori

           
          映画トーク抄録

     「尾崎翠の新世界」

     浜野佐知/宝井誠明/鳥居しのぶ

 

 左から浜野佐知(監督)、宝井誠明(俳優)、鳥居しのぶ(俳優)


新編集版をつくったわけ

浜野 いま観ていただいた 『第七官界彷徨―尾崎翠を探して』
は、1998年に初めて私が鳥取の地を踏んで撮った作品を新編
集したものです。今年 DVD 化しまして、実はこれが本邦、いや
世界初公開になります。
 不思議なんですね。1998年に尾崎翠の実人生と『第七官界
彷徨』という小説世界とプラス現代、つまり20世紀末、1998年
の現代を組み合わせてつのパートでこの作品を作ったんです。と
ころが、 現代パートは 月日を追うごとに 古くなってくるんですね。
21世紀になり、現代の部分だけがとにかく古くなっていって、尾
崎翠の作品が古くなっていかない。 ほんとに小説もそうですが、
古びないですね、尾崎翠は。
 ということは、いまだに尾崎翠の作品に時代が追いついていな
いんです。逆に1998年時は、「尾崎翠ってだれ?」っていう声が
10人のうち9人、1000人のうち999人という時代でした。
 なので当時は、「尾崎翠とは何なんだ」「だれなんだ」「どうして
今、尾崎翠なんだ」ということを映画で知らせていく。知ってもらう、
日本の人たち、世界の人たちに。とても大きな目的があったわけ
です。
 それで現代を入れたんですけれども、それから12年たって、も
はや尾崎翠の名前は日本どころか、世界でも通用する名前にな
ったと私は思っています。ですから、 尾崎翠はだれという部分を
外して、尾崎翠の実人生と小説世界だけで編集し直そうという目
的で作ったんですね。 
 それで編集してから大きな会場にかけるのはここが初めてです
ので、いま一緒に観まして、 自分でいうと自画自賛になってしま
うんですけど、 あっ私って永久に古びない映画を作ったなって思
ってしまいました 。 尾崎翠の力というのはやっぱりすごい! も
のすごい!。撮影の苦労なんか思い出すと、涙がほろほろこぼれ
るところなんですけど、なんか今日はうれしくて観てしまったような
感じです。


世界に希有な翠役者


浜野 俳優さんもとても良くて……。 尾崎翠の映画ってやっぱり
尾崎翠の言葉を理解し、言葉を台詞にして話して、自然に聞ける
俳優っていうのはなかなかいないんです。 そういう意味では、世
界に希有な翠役者っていうのがこの隣にいる宝井君で、彼ほど尾
崎翠の世界に合う役者はいないっていうふうに 私は思っているん
ですね。とりあえず二本の映画で、三五郎と九作を演じてくれた宝
井君に何を感じ、何を思われたか、語っていただきましょう。
宝井 まず自分が感じるのは、“3D”を超えた“7D”かな。例えば、
町子の役にうとうとしてしまうというか、 第七官界に行ってしまうと
いうのは、3Dを超えた7Dですね。この独特の感覚世界をつくりあ
げた浜野監督、脚本の山崎さんの熱意は改めて凄いなと思います。
浜野さんはNGというか、あまり厳しいことは言われないで、自分で
やったものを全部見ていただき、いいものを出して下さいました。町
子と撮影している時でも、 シンクロが大事と浜野監督は言っていた
だいて、(町子の気持ちと三五郎の気持ち、 演者の私と相手の気
持ち、そしてストーリーすべてがシンクロするような)バーチャルとリ
アリティーがかけ離れているようで、ちゃんと芸術的なところもうまく
シンクロしているのは、やっぱり深みがあります。
浜野 鳥居さんは2006年に撮った『こほろぎ嬢』で、こほろぎ嬢の
役をやっていただきました。私は非常に『こほろぎ嬢』という作品が
好きで、尾崎翠をやるんだったら、いつか 『こほろぎ嬢』だと思って
いたので、『こほろぎ嬢』に対する思い入れはものすごく深かったん
でね。 キャスティングも非常に悩んで、いろいろ探して、できること
なら映画の俳優さんよりは舞台なんかで活躍されている方が新鮮
な感じでいいな、というふうに思いまして、私の20代からの友人で
ある外波山(文明)さんの劇団「椿組」にいる鳥居さんに出会うこと
ができました。鳥居さんは『こほろぎ嬢』に出てくださって、今この映
画を観てくださって、尾崎翠をどういうふうに感じられましたか。
鳥居 最初は、すごくかわいらしいファンタジックな方なんかな、と。
尾崎翠さんを愛してやまないスタッフのみなさんからいろんなことを
聞きますと、決して少女的な方だけではなくて、 とてもさばさばとし
て、すごく貪欲な方、エネルギッシュな方なんだと感じました。いま、
映画を観ましても、どの役にも必ずファンタスティックなもの、これ私
よ、これ私よ、これ私よ、っていう雰囲気を出すことを感じました。


真実に近づき自信持つ


浜野 蘚苔のシンポジウムもそうですし、その前の池内さんの講
演もそうですし、 澤登さん、 山名さんの講演もそうでしたし、 み
なさんがお話くださったことが、 この映画の中に集約されている
ような気がすごくしたんですね 。 だから、 作るときは目いっぱい
がんばって、いろいろやったんですけれども、かえってそれが尾
崎翠の真実に近づいた作品になってたような、結構自信を持っち
ゃったんですね。
 当時はある文芸評論家のおっさんに私物化されておりまして、
鳥取に帰ってから生きる屍のように空しく老いて死んだ、なんて
ことをいわれてたんですけれども、 私はそれは違うんだろうと 。
これだけの作品を書いた作家が、そんな不幸せな、自分の人生
を悔いながら死んでいくはずがないって思って、いろいろ話を聞い
て、私の尾崎翠像を作り上げていきました。 ちょっとここには並
んでいませんけど、脚本家が来ています。昨日、蘚苔のシンポジ
ウムに出ましたが、この映画を再編集したことについて、 ひとこ
とを。
山崎邦紀 こんにちは。編集した後、今日初めて観たんですけど、
非常にすっきりしたものになって大変良かったと思います。 やっ
ぱり、白石加代子さんという女優さんは圧倒的な人で、 そういう
役者に巡り会えたことが シナリオライターとして ラッキーだった
と。 宝井君もとてもすばらしいんですが、 役者が非常にすばらし
い演技をしています。 あと、 尾崎翠独特のユーモアというのは、
ゲラゲラ笑うものじゃないですから、 なかなか一般的な修正とい
う意味で難しいとこがあるんだなという気がしました。 そして何
度観ても飽きない映画になっているなと思いました。


映画を観て想うこと


浜野  この映画の中には、今日翠の甥の松本さんがいらしてくだ
さっていますが、 松本さんのお孫さんやみなさんが出てくださっ
て、尾崎翠の遺したものを、遺された私たちがみんなで手を取り
合って一生懸命に作った映画だったんだな、 って改めて感じて、
すごくうれしく思っています。松本さん、いかがですか?
松本敏行 いろいろとお世話になりまして、すみません。 いま思
い出すことは、 12年前に若葉台の姉(早川洋子)の家においで
になりまして、私と姉の二人が会ったんですけど、 そんなことで
始まったお付き合いです。
山崎邦紀 海岸の少年が松本さんです。
浜野 そうです、そうです。 海で水を汲んでいるのが松本さんで、
映画ではお孫さんがその役をされました。松本さんから聞かされ
たエピソードを脚本にしました。ほんとにありがとうございました。
浜野 昨日のいわみコーラスで美しい声を聞かせてくださった中
に山名淳さんがいらっしゃるんですけど、岩美の西法寺さんの堂
守さんなんです。白石加代子さんと吉行和子さんが一緒に西法寺
の前を通るときに、 今の新しい西法寺ではなく (改装以前の 古
い方の西法寺なんですが、 後ろで頬かむりして焚き火しているの
に出演してくださった方です。 この中にいらっしゃる方もいっぱい、
いっぱいエキストラで出ていただいて、 夜汽車の中にもいらしてく
ださって、そういう意味でもこの映画を楽しんで観ていただけました
か。
山名立洋 先ほどの映画を観てすごく印象的だったのが、 東京か
ら連れて帰ら れる翠の顔がアップになって、目の表情がすごかっ
たんですよ。その中になんか、東京から離れて鳥取に帰るというこ
とが強く入っているなあと感じました。また小野町子役について、し
ゃべればいいのに、なぜここでしゃべらないのかなあと思うところが
たくさんあったんですけど、台詞なしで表情だけで、そのときの自分
の気持ちを表すシーンが多かったように思い
ます。
鳥居 私はこほろぎ嬢だったんで、小野町子をどう演じていらっしゃ
ったかわからないですが、まず役をいただいたときに「台詞はあり
ません」といわれました。私は舞台の方の演技で、どうしても自分
を出す、見せる、押し付けるということに重きを置いていたんですが、
年齢的にもそういうことから離れて、勘で演技をしようと思っていた
ときに、こほろぎ嬢の役をいただいて、ゆっくり感じるというお芝居を
させていただました。今日映画を観せていただき、昨晩『第七官界
彷徨』を読んで、ああ、第七官界にいればいいのか、と。まあ、行っ
たことはありませんよ。何か超越したところに空としていれば、みな
さんに伝わるではないか。そういうことでいいかなって。すごく難しい
ことなんですが、実は難しいことではないと映画を観て思いました。


これからの映画そして鳥取


浜野 ちょっと宣伝させてください。京都シネマという所で7月4日か
ら一週間、私の全タイトル『こほろぎ嬢』『第七官界彷徨』『百合祭』
が特集上映されます。『こほろぎ嬢』のロケ地マップとか、いろいろ
鳥取関係グッズも置いて、宣伝しつつ上映をやろうと思います。京
都方面にお知り合いがありましたら、お知らせいただければうれし
いです。 
  実は私、今年の10月に新しい映画 『百合子、 ダスヴィダーニ
ヤ』 をクランクインします。宮本百合子の『伸子』と、沢部ひとみさん
のルポルタージュに『百合子、ダスヴィダーニヤ』が原作です。ダス
ヴィダーニヤ ― ロシア語で 「百合子、さようなら」という意味です。
小説家の中條百合子は、尾崎翠とほとんど同じ時代を生きた人で、
後に日本共産党書記長の宮本顕治と結婚して宮本百合子となった
女性と、ロシア文学者の湯浅芳子が七年間にわたって一緒に生活
してるんですね。その生活の中で百合子は『伸子』 という代表作を
生み出し、芳子はロシア文学翻訳者としての道を歩み出していくとい
う、女性2人が互いを愛し合い助け合って生きた生活と破綻を描いて
いきたいなと思っています。
 私は尾崎翠と松下文子さんとの友情を全く別の一本の映画にし
たいと思ったくらいですので、そういう女性同士の友情、愛情をずっ
とテーマとして追っかけて来ました。
 「支援する会」が東京で立ち上がりまして、 いまカンパを集めてい
ます。できれば鳥取でも立ち上げてくれればいいなと思って、みなさ
んにお願いいたします。
宝井 ありがとうございました。がんばりますので、末長くよろしくお
願いいたします。
鳥居 みなさん、ありがとうございました。今回はお招きいただいて
伺うことになったんですが、家族を連れてきました。実は 『こほろぎ
嬢』の後に子宝に恵まれまして、母親になりました。2歳の娘がおり
ますので、東京に置いてくるわけにはいかず、母と主人をベビーシッ
ターにして来ました。残念ながら雨だったんですけど、 すごくみなさ
ん温かいですね。やさしく声をかけていただいて……。うちの娘が嫁
ぎ、年を取っても変わらぬ鳥取でいてください。また、来ます。
浜野 私はこれからも尾崎翠に関わっていきたいと思いますけど、
映画の監督ですので、 ほかの作品も撮ります。だけれども絶対に
新作を持って、 やっぱり鳥取に帰ってきたいです。 ぜひ上映して、
みなさんに観ていただきたいです。 来年は必ず新作を持って戻っ
てきますので、どうぞその時はよろしくお願いします。今日はほんと
にありがとうございました)。

              
  (記録 山本薫里/抄録・土井淑平)

 

※ 映画トークの詳細は 『尾崎翠フォーラム・in・鳥取2010報告集』(12月中旬
刊行)に収録します。報告集の問合せと注文は以下まで。

       manager@osaki-midori.gr.jp