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今年のフォーラム

Osaki Midori Forum in Tottori

           
          浜野佐知監督挨拶抄録

シンポジウム

 「尾崎翠の新世紀−第七官界への招待−」

   を開催して

            映画監督 浜野佐知



 私たちは、今年の3月に東京で、「尾崎翠の新世紀 − 第七官
界への招待−」と銘打ったシンポジウムを開催しました。
 このシンポジウムは、3月27日、28日の2日間に亘って、東京
駒場の日本近代文学館を会場に開催されたのですが、鳥取から
もこのフォーラムの代表である土井さんを初め実行委員の皆様、
ご遺族の松本敏行さん、早川洋子さんなどが参加してくださいま
した。2日間で延べ400人以上の方たちの参加があり、お蔭様
で大成功のうちに終了することが出来ました。
 シンポジウムの企画は、一昨年、鳥取のフォーラムで、平井県
知事とお目にかかった折に、東京でもこういったフォーラムがで
きたらいいですね、 と雑談の中でお話したことがきっかけでスタ
ートしました。
 初めての東京からの尾崎翠の発信、という夢のような企画が、
鳥取県のご協力を得て、実現することになったのです。尾崎翠の
歴史においてエポック ・ メイキングなシンポジウムが実現したの
ではないかと思っています。
 日本近代文学館は、近代文学の資料収集と保存を目的に、1962
年から建設運動が始まり、多くの文学者や研究者が協力して、67
年に駒場公園内にオープンしました。初代の理事長は、作家の高
見順です。それでこの文学館には、尾崎翠が高見順に当てた直筆
の手紙と「第七官界彷徨」のサイン本が保存されています。1933年
に『 第七官界彷徨 』の単行本が出た後、高見順が鳥取の尾崎翠
に感想を送り、それに対する返事です。
 実は昨年、日本近代文学館で 「女性作家の手紙展」 が開かれ、
尾崎翠のコーナーに映画『第七官界彷徨・尾崎翠を探して』と『こ
ほろぎ嬢』のポスターとパンフレットも展示したいという学芸員の方
からのコンタクトがあり、それがきっかけでシンポジウムとの繋がり
ができました。言ってみれば、尾崎翠の手紙が結んでくれた縁なの
ですが、当時、会場探しに奔走していた私にとっては、まるで尾崎
翠が導いてくれたような出会いでした。
 日本近代文学館の講堂のキャパシティーが、200人前後という
狭さから、基本的なPRと予約受付をインターネットに限定せざる
を得ませんでしたが、ネットで予約を受け付ける前から、ホームペ
ージを見た人たちからの反応がすごく、予約受付を開始した途端
定員に達してしまうような勢いでした。慌てて、いったん予約をスト
ップし、3月になって追加予約を受け付けたのですが、すぐに満杯
になってしまいました。
 最初は、初日の講演に登場する現代文学のカリスマ、川上未映
子さん人気のせいではないかと思われましたが、確かに初日の予
約が先行したものの、「こほろぎ嬢」の映画や2日目の予約もあっ
という間に埋まってしまいました。尾崎翠の底力とでもいうのでしょ
うか。基本的には尾崎翠の人気だと思いました。

若い世代で超満員の東京のシンポジウム会場で挨拶する浜野佐知監督

  尾崎翠の人気って不思議ですね。爆発的な、世間をにぎわすよ
うな人気ではなく 、水面下で深く静かに流れていく人気なんです。
私は、開会のときの実行委員長の挨拶のなかで、
 「 尾崎翠を愛する人たちは、普段は雲や霞のように、どこにい
るのか分からないけれど、実は尾崎翠につながる地下水脈があ
って、そこから出現してくれているのではないか。 私たちは時代
を隔てても、地下水脈でつながった 、「 尾崎翠の娘たち」なので
はないだろうか」と話ましたが、本当に 「 水脈の娘たち」 で溢れ
た2日間でした。
 予約がネットだけだったので、ほとんどは二十代、三十代の若
い人たちで、これには日本近代文学館の人たちもビックリしてい
ました。1日で200人、2日で400人近くの若い人たちが 、文学
館を訪れるなんて、前代未聞のことだというんですね。私たちにと
っても、日本近代文学館にとっても、尾崎翠で提携できたことは、
とても良かったと思っています。
 特に良かったのは 、 会場内に展示スペースを持てたことです。
今回のシンポジウムでは 、会場の講堂の前に陳列ケースを3つ
並べて、そこに1912年の鳥取高女時代の作文から1941年 の
日本海新聞へのエッセイまで 、尾崎翠が執筆した雑誌や新聞 、
作品を収録した単行本、それに手紙や原稿などを展示しました。
ここで特に感謝しなければならないのは 、鳥取県立図書館から
全面的なご協力をいただけたということです。
 さて、シンポジウムの内容ですが、初日27日のプログラムは、
駆けつけてくださった岩美町の榎本町長と鳥取県文化観光局の
前田副局長のご挨拶から始まって、芥川賞作家の川上未映子さ
んの講演「いったい、第七官界って何のことやと思います?」 と、
活動弁士澤登翠さんの朗読「アップルパイの午後」を組みました。
 川上さんの講演は、翠文学のほかの小説にはない非常に変わ
った部分や、哲学的な側面について、観客に向かってダイレクト
に語り掛けました。詩や哲学についてとても深く考える人で、ご自
身を「感じる専門家」と位置づけ、尾崎翠の世界観を「円環を描
くイメージ」「終ることのない状態」ととらえて、「言葉」と言葉が指
し示す「存在」から、第七官界にアプローチされました。講演の後
の質疑応答もとても活発に行なわれて、見事なステージだったと
思います。
 澤登さんの朗読「アップルパイの午後」は 、 湯浅ジョーイチさ
んのギター伴奏もあって、とてもモダンな作品に仕上がっていて、
感動的でした。

東京のシンポジウムで「尾崎翠の新しさ」について講演する池内紀さん


 2日目は 、午前中が「こほろぎ嬢」の上映で 、こほろぎ嬢役の
鳥居しのぶさんと、土田九作役の宝井誠明くんが舞台挨拶に来
てくれて、鳥取ロケのことなど懐かしいエピソードで盛り上がりま
した。
 午後は 、カフカの名翻訳者として知られる 、ドイツ文学者・エ
ッセイストの池内紀さんの講演「尾崎翠の新しさ」、と漫画家の吉
野朔実さん、作家・評論家の高原英理さん、芥川賞候補作家の
木村紅美さんをパネリストに、司会をお茶の水女子大学の菅聡
子教授で、パネルディスカッション「尾崎翠文学によせて−<少
女>と<幻想>の交差」を行ないました。
 池内さんのご講演では、「大正、昭和の初期に、鳥取と東京の
間を何度も行き来した翠の心の内を推し量りながら 、 それがど
のように翠の作品に反映しているか語ってくれました。また、時代
と作家の関係について、「 翠が鳥取に戻ってから断筆したのは 、
戦争に向かっていた時期、自分という作家が戦争に利用されるの
を拒んだからだ。だから、翠を悲運で孤独と論じるのは間違いだ」
と話されていて、大いに納得しました。私が、「 第七官界彷徨 −
尾崎翠を探して」以来言い続けてきたことに力をもらったようでし
た。
 また、「ある意味で尾崎翠は長く忘れられた存在であったおか
げで、いじりまわされたり、汚されたりしないですんだ 。 だから、
手付かずのまま現代に蘇ることが出来た」とも言われましたが、
それは、「黄金の沈黙」と翠自身が言ったように、尾崎翠が自ら
掴み取った幸運だったのだろうと思います。
 最後を締めるパネル・ディスカッションは、バックグラウンドの
異なる皆さんがそれぞれの翠を投げかける、ライブ感覚に満ち
た討論になりました。最初に代表して報告した高原英理さんは、
かつて 「少女領域」という評論でセンセーションを巻き起こした
人です。日本の少女論を語る上で 、高原理論は海外でも重要
視されていますが、現在は作家として活躍しています。
 吉野朔実さんは、少女漫画界のビッグネームです。少女漫画と
尾崎翠の関係については何度も論じられてきましたが、少女漫画
家自身が登場して尾崎翠について語るのは初めてではないでしょ
うか。 吉野さんは以前 、「 ウンコが出てきても美しいとは恐るべ
し、第七官界彷徨」とか 「知られざる少女漫画の魂がここにはあ
る」と書かれていますが、翠の作品の登場人物たちの恋愛につい
ての鋭い指摘など、会場を大いに沸かせてくれました。
 もう一人のパネラー、木村紅美さんは昨年芥川賞候補にあがっ
た新進作家ですが、新人賞をとったデビュー作 「風化する女」 で
は、謎めいた登場人物を鳥取県の出身とするぐらい、尾崎翠に傾
斜した人です。 小説を書き始める前は、「 この世に小説は『第七
官界彷徨』一篇だけでいいのかもしれない 」 と思ったそうですが、
小説家として尾崎翠に触発されるものを、ゴーゴリなど世界の文
学と関連させながら語ってくれました。
 司会の菅聡子さんは、御茶ノ水女子大の教授で、専門は樋口
一葉ですが、「少女小説ワンダーランド」という大変面白い本の編
者でもあります。尾崎翠は一時期たくさんの少女小説を書きまし
たが、女性の表現を探求する菅さんは、作家、漫画家の皆さんの
話を引き出すのに最適の方でした。

 2日間のシンポジウムで延べ400人の人達が新しい世紀に尾
崎翠と出会うために、日本近代文学館に集まりました。全集や文
庫本を抱きしめた参加者たちが、熱心に講演やパネルディスカッ
ションを聴いて、質疑応答では活発な意見交換がなされています。
シンポジウム終了後は、おおぜいの参加者が駒場東大前の駅に
歩きながら、皆がそれぞれ尾崎翠の話をしています。
 私が98年に、『第七官界彷徨〜尾崎翠を探して』を撮影してい
るときには、こんな日が来るなんて夢にも思いませんでした。たっ
た10年ちょっと前のことですが、その頃、尾崎翠は忘れられた不
幸な作家扱いをされていたのです。
 私たちは、尾崎翠を知ってもらうために、「 東の宮沢賢治 、西
の尾崎翠」 というキャッチフレーズを掲げましたが 、今回池内紀
さんが講演のなかで、同じ年に生まれた尾崎翠と宮沢賢治を比較
して論じてくれました。それを聞きながら私は、この10年を思い返
して感無量でした。
 このシンポジウムがきっかけになったかどうか分かりませんが、
触発されたように、河出書房新社から「道の手帖」シリーズ『尾
崎翠 モダンガアルの偏愛』と文庫版『第七官界彷徨』が出版さ
れました。ANAの機内誌 「翼の王国」 でも、尾崎翠が特集され
ました。日出山陽子さんの「尾崎翠への旅−本と雑誌の迷路の
なかで−」も8月に出版されます。
 これまでやってきたことが 、 ひとつのうねりのようになってき
ていることを感じます。尾崎翠は、いつの、どんな時代にも、鮮
やかに蘇る。私は、そう信じています。私たちのシンポジウムは
単発でしたが、鳥取には、毎年このフォーラムがあります。世界
に向かう尾崎翠発信の基地として、これからも素晴らしい回を重
ねていかれますことをお祈りいたします。

 

※ フォーラムの詳細は 『尾崎翠フォーラム・in・鳥取2009報告集』
(12月
上旬刊行)に収録します。報告集の問合せと注文は以下まで。

  尾崎翠フォーラム実行委員会
    〒680−0851 鳥取市大杙26 土井淑平気付
    (TEL・FAX) 0857−27−7369
    (Eメール)  manager@osaki-midori.gr.jp