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Osaki Midori Forum in Tottori

 

 澤登 翠 ワールド≠ノ酔いしれる

 澤登 翠 35周年記念 活弁付き上映会&祝賀会に出席して

                         土井淑平

 


 澤登翠さんの弁士35周年記念の活弁付き上映会&祝賀会
が10月20日に東京・学士会館で開かれ、私もこの機会は逃
せないとの想いから、久し振りに重い腰を上げて上京、この記
念すべき会に出席させていただきました。
 若ころから根っからの映画ファンの私は、リバイバルとはい
え戦後イタリアのネオリアリズモとか戦前フランスの黄金時代
のトーキー映画などを夢中で観て育った1人ですが、 無声映
画はチャップリンのもの以外はほとんど観ていませんでした。
 近年、 ビデオショップで無声映画の名作もかなり観ることが
できるようになったとはいえ、地方では生の活弁で無声映画を
直接観賞できる機会は滅多にありません。むろん鳥取でも澤
登翠さんの活弁で無声映画の上映会が持たれたことは以前あ
りましたが、私の場合は尾崎翠フォーラムに3回お招きした澤
登翠さんの活弁付き上映が無声映画の直接観賞の初体験で
した。
 さて、澤登翠さんの弁士35周年記念の活弁付き上映会は、
斎藤寅次郎監督のシュールな喜劇『モダン怪談100,000,000
円』で笑い、溝口健二監督の初期のメロドラマ『東京行進曲』
でほろりとなり、シェーストレム監督の悲劇『真紅の文字』の迫
力に圧倒される仕掛けで、異なる3つのジャンルを時を置かず
に演じ分ける澤登翠さんの活弁もまさに円熟の境地。長年の
コンビで澤登翠さんと公演活動を続けている楽団カラード・モ
ノトーンの生演奏も印象深いものでした。
 なかでも、ホーソンの『緋文字』を原作とした『真紅の文字』は、
リリアン・ギッシュが主演したじつに見応えのある映画でした。
若いころ観て感動したイヴ・モンタンやミレーヌ・ドモンジョ主演
のフランス映画『サレムの魔女』(原作はマッカーシズムを批判
したアーサー・ミラーの『るつぼ』)と同様、植民初期のニューイ
ングランドのピューリタンの世界という舞台と時代背景にも興味
をそそられましたが、パセティックな結末に向って話を盛り上げ
ていく澤登翠さんの活弁は文字通り圧巻でした。
 大きな感動が満席の会場を包んだあと、場所を代えての祝賀
会も大勢の参加者で大盛況でした。私たちが尾崎翠フォーラム
のゲストに招いた松本侑壬子さんや川崎賢子さんと、この祝賀
会で再会できたのもうれしい機縁でした。かつての私の職場の
同僚の小池新さんも、澤登翠さんの35周年記念の映像の取材
に来ていて、実に30年ぶりに再会したのも奇遇でした。
 ほろ酔い気分で小池新さんやかれの友人数人と久し振りの
神田の街で飲み直しましたが、そのメンバーのなかには澤登翠
さんから以前いただいていた浩瀚な『小津安二郎周游』の著者
・田中眞澄さんもおられ、35年におよぶ澤登翠さんの個性的で
幅広い人脈の一端に触れた思いでした。
 祝賀会の引き出物のなかには、澤登翠さんの活弁による溝口
健二監督の名作『瀧の白糸』『東京行進曲』のDVDが入っていて、
鳥取に帰ってから家でじっくり観賞しましたが、古い時代の古い
皮袋に包まれている無声映画の生命が、澤登翠さんの見事な話
芸で新たによみがえり、目の前に迫ってくる感じでした。
 話は前後しますが、さきの祝賀会で僭越にも司会より祝辞の
指名を受けた私は、いま聴いたばかりの澤登翠さんの素晴らし
い活弁の余韻を引き摺りながら、アルコールともども澤登翠
ワールド≠ノ酔いしれ、およそ以下のようなスピーチをしました。
                                     ※
 きょうは素晴らしい映画を3本、 本当に有難うございました。
なかでも、『真紅の文字』には圧倒される思いでした。私は山
陰の鳥取からまいりましたが、この映画1本を観るためだけで
も、来てよかったと思います。
 自己紹介が遅れましたが、私は尾崎翠フォーラム実行委員会
の代表をしています土井です。尾崎翠は大正末から昭和初期に
活躍した鳥取出身の女性作家で、 近年再評価が高まりフェミニ
ズムの先駆者としても注目されています。
 代表作の「第七官界彷徨」や「こほろぎ嬢」を発表したあと、精
神の変調をきたして帰郷し筆を絶ちました。同世代の女性作家
には吉屋信子や林芙美子がいて、林芙美子は少し年下ですが
尾崎翠を慕っていまして、彼女は帰郷して消息を絶った尾崎翠
を後年回想して、「いい作品というものは一度読めば恋よりも思
い出が苦しい」「こんなひとを芥川賞にしたら」と書いています。
 その尾崎翠の出身地の鳥取で尾崎翠フォーラムを始めて今年
で7回目になりますが、澤登翠さんを7回のうち3回フォーラムに
招きまして、無声映画のファンだった尾崎翠が「映画漫想」という
傑出した映画評論で称賛した『プラーグの大学生』『椿姫』『サロ
メ』を、澤登翠さんの活弁で上映して圧倒的な好評を博しました。
フォーラムのあと再び呼んでほしいとのアンコールの声をそのた
びに受けています。
 澤登翠さんは尾崎翠と「翠」の1字を共有されていて、 まさに
翠が翠を知る≠ニいうのでしょうか、澤登翠さんは尾崎翠の卓
抜な読み手であります。尾崎翠フォーラムの報告集やHPに掲載
している記録を読んでもらえば分かりますが、私は澤登翠さんの
「映画漫想」評は最高の尾崎翠論の1つと考えています。
  3年前の尾崎翠フォーラムに招いたカナダ・モントリオール
大学のリヴィア・モネ教授は、 尾崎翠の「映画漫想」には徳川
夢声の話術の影響があるといみじくも指摘し、徳川夢声はじめ
活動弁士の話術の本質は「変装・仮装のドラマトゥルギー」だと
喝破しました。澤登翠さんはその無声映画の弁士的話術を徳
川夢声や松田春翠から受け継ぎ、現代に生きる話芸の芸術と
して復権・発展させ、澤登翠ワールド≠ニ呼ぶべき世界をつく
り上げてこられたのだと思います。
 今年の尾崎翠フォーラムで上映した尾崎翠絶賛の『サロメ』
は、大正末期に日本でも初公開されたものですが、国内にフィ
ルムがないためマツダ映画社に特注し、アメリカからDVDを取
り寄せてもらって、 澤登翠さんの活弁で再上映させていただ
きました。主演のナジモヴァの映画的舞踊と澤登翠さんの弁
士的話術の結合の産物とでも言うべき記念すべき公演でした。
 そうそうたる方々が集まっておられますこのような場で、私の
ような者が申し上げるのも僭越至極ではありますが、澤登翠さ
んが話芸の国際的な芸術家として活躍されることで、この何か
殺伐とした一面のある世相に、私たちが失ってはならいもの大
切なものを、示し続けてほしいと願います。どうも有難うござい
ました。

 (尾崎翠フォーラム実行委員会代表、2007年11月16日記)