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書籍紹介Osaki Midori Forum in Tottor
=書評=
第10回記念
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日出山陽子
昨年7月に開催された「尾崎翠フォーラム
in 鳥取 2010」
は、第10回記念にふさわしいすばらしいプログラムだった
が、先日届いた報告集には胸が躍った。
報告集に収録されたドイツ文学者の池内紀 ・活動弁士の
澤登翠・養源寺住職の山名立洋各氏の講演、蘚苔をめぐる
シンポジウム等の臨場感あふれる記録は、 10年という節目
のフォーラム に参加できた幸せ、 感動を再び蘇らせてくれ
た。そして 「尾崎翠新発見資料」 「尾崎翠文学参考文献目
録」は、翠について調べてきた私にとってまさにプレゼントだ
った。
尾崎翠の新出資料は、鳥取県立図書館の学芸員・渡邉仁
美氏が特別資料展「尾崎翠―迷宮への旅―」(2010年6月26
日〜7月25日)の準備過程で発見されたもの。全集未掲載作
品で特に注目されるのは、大正7年の 『小学生』
に掲載され
た初期短編小説3篇。
翠が児童雑誌に書いていたことは知られておらず、
新たな
作品発見の可能性も含め、今後の研究が待たれる。同時代評
では、代用教員時代や鳥取帰郷後の様子がわかる記事、「無
風帯から」についての作家評など、
尾崎翠の空白部分を埋め
る貴重な資料が紹介されている。
また 「 松下文子旧蔵資料概要 」 は、『 定本尾崎翠全集
』
(筑摩書房)において不明な点が多かった 「
琉璃玉の耳輪」
などの原稿についての調査報告で、『 阪妻画報 』 昭和2年6
月号の調査とあわせ、原稿の署名、丘路子宛阪東妻三郎プ
ロダクション 書簡 ( 全文翻刻 )
等が明らかになったことは、
研究の基礎データができたという意味でも
非常に意義深い。
最後に、お茶の水女子大学の武内佳代、金ハヨン両氏によ
る最新かつ詳細な「
尾崎翠文学参考文献目録」が掲載されて
いるのも大きな魅力だ 。 ここ十年余りで
急激に深化してきた
尾崎翠研究において、尾崎翠フォーラムや報告集がいかに牽
引役を果たしてきたか、
この目録を通して十分に知ることが
できる。
尾崎翠フォーラム実行委員会の皆さまに感謝申し上
げるとともに、さらなる飛躍を願ってやまない。
(文学研究者)
報告集はA4判、100ページ、1500円、送料80円。
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