今年のフォーラム
Osaki Midori Forum in Tottori
第6回
尾崎翠フォーラム in 鳥取2006
〔日 時〕7月8日(土)13:30〜17:00講演・朗読劇他
7月9日(日)
9:00〜14:00文学散歩ツアー
〔場 所〕鳥取県立県民文化会館(第1会議室)
ほか
=朗読劇=
◆『アップルパイの午後』◆
魅力と背景
兄妹ゆえの毒舌と愛情
角秋勝治
第2部は朗読劇『アップルパイの午後』。作品は昭和4年の『女人芸術』8月号に発表された戯曲で、登場人物は小野兄妹と兄の友人、そしてト書きの四人という、上演約三〇分のシンプルなドラマである。
設定は勉強のため上京した兄妹が同居する、「ものうい日曜」の部屋。妹の「校友会誌」をめくっていた兄は、そこに自分の悪口を書いた妹の文章を発見する。たちまち始まる兄妹げんか。しかし、兄が苛立つ原因はもう一つ別にあった。実は前の日曜日に兄は、友人・松村の妹にプロポーズし、返事が今日くることになっていたのだ。
終盤近くになってようやく、その返事とアップルパイを持った友人が来訪する。喜び勇んで部屋を飛び出す兄。残された妹と松村は、そして「アップルパイ」の意味とは―。
若い近親者たちが同居する「兄妹世帯」の物語は、代表作『第七官界彷徨』にも繰り返されている翠文学のパターンである。それは学問による立身出世と女子教育を信じ、地方から向学心に燃える若者が上京した時代。研究者の塚本靖代さんは「都会に遊学する妹たちは、父の代理としての兄に預けられ」、それは「恋愛と家庭を実行するにふさわしい存在に教育するための最良の空間」であった、と述べている。
しかし、兄が求める「家庭」は女性を抑圧する場所でもあり、自由な「恋愛」を求める妹は当然のごとく抵抗する。しかも、親族で果たせない愛と家は、必然的に兄と妹の「交換」を促す。このドラマには、ジェンダーを乗り越えることで可能となった「家父長制」への抵抗が、パロディーとして巧みに仕掛けられているわけだ。
理論はともかく『アップルパイの午後』は、丁々発止と展開される兄妹の歯切れよくユーモラスな応酬を楽しみたい。翠独得の比喩と毒舌、その裏に隠されたそこはかとない愛情、そして訳ありの妹たちが、必ずや「あなたの午後」を満たしてくれるだろう。
出演は兄にアナウンサーとしてお馴染みの塩澤大輔さん、妹に劇団「ぽーぶる」の加藤裕美さん、友人に鳥取大学生で劇団あしあとの引田幹康さん、演出・ト書きは鳥取演劇集団の松本健一さん。フレッシュで異色の配役に期待大である。
また朗読効果を上げるため、鳥取県文化振興財団の協力も仰ぐ。照明、音響ともプロパーとしての実力を備えたスタッフが、雰囲気をさらに盛上げてくれるだろう。
演出の松本さんは「劇団青俳」時代、今井正監督の映画『あゝ声なき友』、木村光一演出の『越前竹人形』、テレビ『さすらいの狼』などに出演。昨年はシンポジウム『漂泊の詩人・伊良子清白』、まなびピア開幕式で大江賢次の『望郷』を朗読している。
演出に当たり松本さんは「翠の自由で自然な感情が流れた会話を、大正ロマンチシズムのお洒落な香りに包み込んでお伝えできれば」と語っている。
(尾崎翠フォーラム実行委員会幹事)
(お問い合せ・参加申込み先)
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〒680−0851 鳥取市大杙26 土井淑平気付
(TEL・FAX)0857−27−7369
(Eメール) manager@osaki-midori.gr.jp
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