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今年のフォーラム

Osaki Midori Forum in Tottori

           
                 浜野佐知のトーク

  『
新作映画「こほろぎ嬢」を語る』
              映画監督  浜野佐知

 

 みなさん、こんにちは。尾崎翠の新作映画『こほろぎ嬢』の紹介をさせ
ていただきたいと思います。

1、 『第七官界彷徨』から8年

 私は、1998年に初めて鳥取で『第七官界彷徨−尾崎翠を探して』とい
う映画を撮りました。当時は尾崎翠の知名度もあまりなくて、非常な困難
が多々あったんですが、制作にあたって、ロケの中心であった岩美町の
皆様や倉吉、鳥取の皆様、そして尾崎翠の親族の皆様の力強くて大き
なご支援とご協力で映画を完成させることができました。
 そして、完成した映画は、日本の各地の女性センターや男女共同参画
センター、劇場では、東京の岩波ホールという商業ベースには乗らなくて
も文化的で良心的な映画を世界中から発掘して上映している、日本では
トップクラスのミニ・シアターでロードショー公開することが出来ました。
 海外では、フランス、ドイツ、アメリカ、エジプト、韓国、台湾、など世界
7か国12都市の国際映画祭や女性映画祭に招待されました。アメリカで
はニューヨークのジャパンソサエティを中心に、日本文学を専攻している
各地の大学で上映し、尾崎翠を語るという、大きな経験をさせていただ
きました。
 そのなかで考えてきたことが、尾崎翠は本当に早く生まれてきた作家
だったんだな、21世紀の今でもまだ新しい、稀有な才能を持った天才だ
ったんだな、ということです。
 2001年からこの「尾崎翠フォーラム」が開催され、今年で6回目です。
いま尾崎翠を知らない人は8年前に比べたら、ほんとうに少なくなりまし
た。特に鳥取では、タクシーに乗っても、尾崎翠と尾崎翠フォーラムの名
前が出るくらいになりました。8年前に比べたら、夢のようですね。

2、第2波ムーブメント起こす

 けれど、まだまだ日本全国、また、世界という場に持っていった時に
は、尾崎翠の名は私が願ったほど浸透はしていない。ここでもう一押し
するためにも、尾崎翠の作品世界を完全映画化したい。そういう思い
がずっとありました。
 前回はまだ尾崎翠自体が「幻の作家」ということもありましたので、代
表作の「第七官界彷徨」と尾崎翠の実人生を合わせた映画にしました
が、2作目は純粋に尾崎翠の作品が持つユーモアやエッセンスをスク
リーンに焼き付けて、言葉よりも身近な映像という手段で世界の人たち
に観てもらいたい。それこそが尾崎翠の再々評価のムーブメントを起こ
すきっかけになるのではないだろうか。そう願って、私は「こほろぎ嬢」
の映画化に取り組みました。
 映画『こほろぎ嬢』は、尾崎翠が「第七官界彷徨」を書いた後、鳥取に
戻る直前の短編「歩行」「地下室アントンの一夜」「こほろぎ嬢」の3作
を原作としていますが、3つのオムニバスではなく、1つのストーリーと
して、「歩行」の少女“小野町子”が成人して売れない詩人“こほろぎ嬢”
になるという構成になっています。
 私は「こほろぎ嬢」が実は一番好きで、作品の中に出てくる「ねぢパン
」を食べたい、食べたいとずっと願いつづけてきたものですから、その
思いがかなって本当に嬉しいです。
 映画『こほろぎ嬢』の撮影は5月に鳥取全県で行ないましたが、鳥取県
が県の支援事業として制作費の一部を助成してくださって、クランク・イ
ンにこぎつけることが出来ました。8年にわたって地道に蒔いてきた種が
やっと芽を出し、花を咲かせることになったのです。
 撮影は倉吉市、岩美町、若桜町、鳥取市、米子市など、ほとんど全県
をカバーするかたちでロケをしました。現在(2006年7月)はアフレコ(
台詞入れ)が終了しまして、今は音楽を作ったり、効果音(砂丘を吹く風
や、浦富海岸に打ち寄せる波の音など)を作っています。
 8月の下旬に台詞、音楽、効果音の全部をミックスしたダビングという
作業を経て、9月の初旬に映画がすべて出来上がる。そして10月に先
行ロードショーとして、鳥取全県で皆様に観ていただくというスケジュー
ルになっています。
 いま、台詞が入っているだけの、まだ効果音も音楽も入っていない状
態ですが、特にこのフォーラムに来てくださった皆様、この映画に協力し
てくださった鳥取の皆様に、映画の進行状態を観ていただきたくて、今
日は10分ほどのダイジェスト版にしてきました。フィルムではなく、DVD
に落としていますので、クオリティはあまりよくありません。ですから、実
際の上映では、きょう観ていただいた映像の百倍は美しい鳥取の自然
がスクリーンによみがえると信じて観ていただきたいと思います。
    
    
(『こほろぎ嬢』ダイジェスト版上映 約十分間)

3、真摯に向き合い理解して

 真摯に向き合い理解していかがでしたでしょうか?尾崎翠の世界を、
どこまで映像化できるか?私は、そこに全力を傾けて、映画『こほろぎ
嬢』を制作しています。
 尾崎翠は難解だとか、読みにくいとか、いろいろ言われますが、そんな
ことはないよ、もっと心を開いて、素直に読めば、こんなに素敵で、面白
いんだよ、ということを映像で表現したい、と思っています。でも、やっぱ
り尾崎翠って難しいな、って思うこともあるんですよ。
 例えば1998年に第1作の『第七官界彷徨―尾崎翠を探して』の時に、
私の背中を押したのがあるTVドラマでした。このドラマでは、尾崎翠は
恋人の脚にすがりついて、よよと泣くような女性に描かれていたんです
ね。私はそれを観て唖然としました。尾崎翠をこんなふうに描かれてた
まるか! こんな歪められた尾崎翠像を世の中に垂れ流されてたまる
か! という怒りが、尾崎翠の実人生と「第七官界彷徨」をミックスさせ
た『第七官界彷徨―尾崎翠を探して』を私に作らせたのです。
 ところが、一昨年、ある有名な劇団が「第七官界彷徨」を演劇でやった
んですよ。超有名女優が尾崎翠を演じていましたが、この尾崎翠像を観
て、私は失神しそうになっちゃった。途中で何度も「止めろ!」って喚き出
しそうになりましたね。だって、年老いた尾崎翠が、何度も何度も叫ぶん
ですよ。「私は女になりたかった!」って。
 そんな尾崎翠がどこにいます?そんな尾崎翠を作りあげられちゃ困る
んです。これが私に映画『こほろぎ嬢』への背中を押してくれました。そう
いう意味では、TVドラマにしろ演劇にしろ、怒りのパワーを私に与えてく
れたんだから、感謝しなければいけませんね。
 つまりね、尾崎翠が難しいのは、読み手ではなく、作り手である私たち
の理解だと思うんです。例えば、尾崎翠の作品世界を「大正ロマン」で括
ろうとする、これは間違いです。私たち作る側が、尾崎翠を表現する側
が、尾崎翠を真に理解せずして、何をいったい作るというのでしょう? 
何を世の中に送り出すというのでしょう? そんなもの、出されちゃ困る
んです。作り手がもっと真摯に尾崎翠と向き合って、彼女の世界を真に
理解してからにしてほしい。
 難しいですよ。尾崎翠は人を選びますから。でも、選ばれて、初めて尾
崎翠を世に送り出すパスポートを手に入れることが出来る、そんなふう
に、私はいま思っています。

4、尾崎翠第3弾への決意新たに

 私は、今回の映画『こほろぎ嬢』で、尾崎翠の再々評価のムーブメント
を起こすことが出来たら、それで私の仕事は終るかな、と思っていました。
 だけど、今日、このフォーラムの熱気を肌で感じて、私はまだまだ死ね
ないと思いましたね。映画『こほろぎ嬢』を完成させて、日本全国で、世
界で上映して、この鳥取が生んだ、百年早かった稀有な天才、を世に問
いたい。
 まだまだ私のやることはあるような気がします。やっぱり、尾崎翠第3
弾は誰にも渡せないですね。この私の手でもう一度、尾崎翠作品を映画
化する! その決意を、今改めて持ちました。
 そのためには、映画『こほろぎ嬢』の鳥取上映を成功させて、新たなる
挑戦をしたいと思いますので、鳥取の皆様のご協力をぜひ、お願いした
いと思います。どうもありがとうございました。
                             
 (記録・山本薫里) 

※トークの詳細は『尾崎翠フォーラム・in・鳥取2006報告集』(12月刊行
予定)に収録します。報告集の問合せと注文は以下まで。

      manager@osaki-midori.gr.jp