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今年のフォーラム

Osaki Midori Forum in Tottori

           
         ◆浜野佐知監督のトーク抄録◆

 
   映画『こほろぎ嬢』の各地の反響から

               
映画監督 浜野佐知


1 ロケ地・鳥取県の先行ロードショーで2500名が観賞

  いま、『サロメ』を観て感動で頭がボーとしてしまいましたが、またい
ろいろと考えることがありました。
  尾崎翠に『瑠璃玉の耳環』というシノプシス―映画のシナリオの前
段階―みたいなものがありますが、それを今回の『サロメ』のように、
映画にして澤登翠さんの活弁で、フォーラムの10回目に上映出来た
らなあ、と、思ったんです。
  さて、皆さんご存知と思いますが、『こほろぎ嬢』 という映画を昨年、
鳥取県の支援事業として制作しました。鳥取全県下でロケをして、昨年
10月に完成しました。1998年の『第七官界彷徨―尾崎翠を探して』に次
ぐ、尾崎翠原作の第2作目です。1作目では尾崎翠の実人生も取り入
れて作ったんですけれど、この『こほろぎ嬢』では、尾崎翠の作品世界
を忠実に映像化するように務めました。
  昨年10月に完成し、すぐに鳥取全県で、先行ロードショーを行いまし
た。鳥取市、岩美町、倉吉市、米子市、若桜町など、ロケをしたところ
で上映しまして、鳥取県で2500名の方々に観ていただきました。鳥取
県ほか岡山県津山市からも観に来ていただきましたが、そのときに頂
いた、またその後の各上映会で頂いた感想をご紹介して行きたいと思
います。
 まず、津山市から来られた方の感想です。
  「『こほろぎ嬢』の鳥取県先行ロードショーを観てまいりました。これが
県の支援事業だなんて ・・・ やっぱりよい国だ鳥取、もう住む!」
  また鳥取市に住む方は、
  「体にいいとか栄養があるとかそういう食べ物があるように、そうい
う映画もあるようです。でも、この映画は、体にそう必要でない良い栄
養素だけれど食べるとジーンとしみわたる好きな食べ物。箱を持った
だけで幸せになるクッキーとか飲み込むと体中コーティングされてし
まいそうなチョコレートケーキとか、そういう映画じゃないかな、と。食
べなくても死なないけれどでも食べられなくなったら私、きっと、幸せ
じゃない。分かってくれるだろう人にだけ、小さな声でおすすめする映
画。願わくば、鳥取で、とか、鳥取の、とかいうことは抜きにして、愛し
てくれる人のもとをたくさん訪れて、たくさん愛し合ってきてほしい。そ
んな映画です」。
  鳥取県の先行ロードショーでは、こんな風なご意見をたくさん頂きま
した。

2 東京国際女性映画祭では一番多くの観客を集める 

  そのあとすぐ東京に戻りまして、第19回東京国際女性映画祭という
ところで、全国に向けての初公開ということになりました。この映画祭は
世界中の女性映画監督の作品を集めた映画祭で、12本の女性監督の
作品が発表されたんですが、『こほろぎ嬢』が一番多くの観客を集めた
作品となりました。
 300席ほどの会場で400名ほどの人が駆けつけてくれたのではないか
と思います。ほんとに鈴なりの、立ち見状態で、「ああこんなにたくさん、
尾崎翠のファンがいたんだ、尾崎翠の映画の完成を待ち望んでくれて
いたんだ」と、私もすごく感動しました。
  その中で、千葉から来られた方 ― というよりこの方は、尾崎翠の研
究者で、作品発掘などもなさっている、そしてこのフォーラムにも参加
されている、日出山陽子さんですが ― から次のような感想を頂いたん
ですけれど、私もとても感動したのでご紹介します。
  「映画『こほろぎ嬢』ではこほろぎ嬢の想いに応えるように、フィオナ
・マクロードがあらわれ、二人が出会うシーンが新たに加えられている。
それはまるで、執筆当時の尾崎翠が叶わぬと知りつつ求めていた姿
を具現したかのようだった。 私は小説『こほろぎ嬢』の最後で、こほろ
ぎ嬢がマクロード嬢に語りかける言葉に、尾崎翠の悲痛な叫びのよう
なものを聞いてしまう。そういう意味でも、この映画のゆくえが気になっ
ていたのだが、映像が可能にしたこの出会いは、昭和7年の尾崎翠か
ら差し伸べられたあたたかな救いの手のように私には感じられた。映
画のラストについては賛否両論かもしれないが、私自身は、『地下室ア
ントンの一夜』の先にひろがる世界として納得できた。満州事変勃発
後の不安な時代、尾崎翠に心身の健康と経済的な後ろ盾だけでもあ
ったら、そして尾崎翠がもう一歩突き抜けたら、このように確信を持っ
て描いていたかも知れない、と思えたのだ」。
  また現在、一部でたくさんの小説やエッセーを発表し、またシンガー
ソングライターとしても活躍され「文筆歌手」としても知られる川上未映
子さんは、素晴らしい感想を書いて下さった後で、
 「一個の存在である私が無数の存在へ向かって、ハロウ!と呼びか
けたくなるよなそんな気持ち。」
 という言葉で締め括って下さいました。

3 東京・下北沢の「シネマ・アートン」で新春ロードショー

  そして年が明けて今年、2007年1月に、東京下北沢の「シネマアート
ン下北沢」という小さな劇場ですけれど、1月4日から14日まで新春ロ
ードショーを行いました。この期間中、1000名を超える尾崎翠の愛読
者、研究者などたくさんの方々に来て頂きました。この新春ロードショ
ーでは、5月にもう一度アンコール上映ということも決まりました。単館
の映画館で、1000人という観客が入ってアンコールということはとても
珍しいことで、私としても非常に嬉しく思いました。
 その中で、歌人のもりまりこさんが下さった感想です。
 「濃密なのにでも重たくなくて、全篇を通しておかしみにあふれてい
る。そこに厳密に描かれている孤独を感じ取った途端、なにが起こっ
たかっていうと、たちまち孤独がどこか、足下へとふりつもってゆくの
ではなくて、頭からすとんとぬけていって解き放たれた感じに、包まれ
てしまった。あの映画の中に通奏低音のように流れていたのは、風通
しのいい孤独だった。映画館を出て少し冷たい風に吹かれながら知ら
ない街を、にぎやかな方へと歩いている時ふと思った。なんだかむだ
に悲しがったり寂しがったり、切ながったりしていたらふふふって、「こ
ほろぎ嬢」に笑われてしまうなぁ、なんて思いながら」。
 歌人の方の素敵な感想でした。

4 大阪の「第7芸術劇場」で『第七官界彷徨』とダブルロードショー

  次に2007年4月に、大阪の「第7藝術劇場」で上映しました。第7藝
術というのは、フランスで映画が第7番目の芸術と呼ばれていて、それ
をそのまま館の名前にしたのです。関西・大阪というコテコテの場所で
すが、小さいけれど心のある作品を上映してくれる映画館です。ここに
は、大阪のみならず、京都、神戸、奈良から来て下さいました。また、
前年の鳥取の先行ロードショーで観た方がもう一度みたい、と来て下
さいました。大阪でも多くの方に来ていただきましたが、ここで特に良
かったのは、『第七官界彷徨―尾崎翠を探して』と『こほろぎ嬢』とのダ
ブルロードショーという、贅沢なプログラムで、観客の方には良かった
のではないかと思います。
 京都から来られた方の感想。
  「翠の、ちょっと滑稽で切なく、時として少女の妄想とも取れるよう
なひとりよがりの、一見閉じられた世界観が受け入れられるのは、作
品が発表された当時よりもむしろ、現代ではないでしょうか。敏感すぎ
る感性をユーモアのオブラートでくるんだ翠の作品そのままに、一点
のあざとさもなく優しく寄り添ったこの映画の作り方に、監督の静かな
愛情を感じました。レトロでありながら限りなくモダン。凛としながらも
抒情的。両性具有的な翠のジェンダー観もきちんと盛り込まれて、翠
さんがこの映画を観たら、拍手喝采されたのではないでしょうか。翠
ファンだけではなく、静かな力を求めている、すべての人に観てもらい
たい映画です」。
  5月は、「シネマアートン下北沢」で先ほどお話ししましたアンコー
ル上映をしました。一日一回、11時からのモーニング上映で観客は
230名でしたが、ここでは、昨年の映画祭で観たけれど、とか新春ロ
ードショーで観たけれど、どうしてももう一度観たい、という方が多か
ったのです。ある感想。
  「あんなに映画が大好きだった翠のことだもの、下界を見下ろしな
がら、どんなにこのことを喜んでいることだろう。いや、下界を見下ろ
すというのは正しくないかも知れない。かの女の魂はきっとあらゆる
場所に、それこそしゃあぷ氏のような気体詩人となって霞のごとく散ら
ばっているに違いないから」。
  もう一人、男性の方。
  「二度目に観る映画というのは、おいしいと分かっているお菓子の
よう。無我夢中で食べた初めての時と違って、おいしい瞬間をゆっくり
味わえる楽しさがある。そしてやっぱりこの味が好きだなという感慨を
持つ。なんと言っても、私が好きなのは、後半のフィオナ・マクラウド嬢
とウィリアム・シャープ氏の恋の場面。ケルトの象徴薊アザミの花に囲
まれた棺の中のシャープ氏が変身する見事な一瞬にユーモア感覚の
ある尾崎翠の世界を感じる」。
  このように、何度も何度も観て下さるお客様がとても多かったです。

5 主役・石井あす香さんの出身地・千葉県松戸市でも上映

  そして5月2日に、千葉県松戸市で上映会を行いました。松戸市は20
世紀梨の原木があることや、尾崎翠の詩「新秋名果」の刻まれたモニュ
メントがあり、また『こほろぎ嬢』で主役・小野町子を演じた石井あす香
さんの出身・在住地ですが、そんな関係から(財)松戸市文化振興財団と
松戸市役所の主催でいろいろと協力して下さいました。2回上映で350名
の方が来て下さいました。鳥取県東京事務所の皆さんも、ロビーに岩美
町のポスターやロケ地マップなどを張り巡らして、ミニ鳥取シティーがで
きたような雰囲気の中で上映することができました。
  今年の12月に徳島市の文化振興財団と徳島県立文学館の共催で
徳島で上映されます。また来年の2月には、大阪府立男女共同参画セ
ンターでの上映が決まっています。少しずつですが尾崎翠を広めてゆく
ために、また尾崎翠が愛した鳥取を広めてゆくためにがんばってゆきた
いと思っています。

                  (記録・西尾雄二/抄録・土井淑平)

※トークの詳細は『尾崎翠フォーラム・in・鳥取2007報告集』(12月刊行
予定)に収録します。報告集の問合せと注文は以下まで。

       manager@osaki-midori.gr.jp