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過去のフォーラム 2002

Osaki Midori Forum in Tottori

 

◆ 林あまりさんの講演
『尾崎翠の小宇宙―短歌と少女小説』より◆

 今回のフォーラムのメインの企画として、歌人の林あまりさんによる講演会が催されました。この講演は筑摩書房の2巻全集に収録されて日の目を見るようになった翠の少女小説、および、初期の短歌を取り上げて興味深い考察を試みたものです。
 林さんはまず少女小説について、尾崎翠を同時代の吉屋信子と比較しながら、信子の少女小説が教訓めいたことを非常に面白く書いているのに対して、翠の少女小説は前期と後期に大きく分かれ、普通の日常を取り上げた前期のものは教訓的だが、後期の幻想的な話の中には教訓を入れていない、と両者の違いを示されました。
 それは翠が吉屋信子と張り合い、その作風に反発みたいなものを持っていて、少女小説の分野でも自分のはっきりした美意識のセンスを持っていたからではないかというのです。また後期の「頚飾(くびかざり)をたづねて」にも触れて、何か貴いものをたづね歩くこの小説の構成は、のちの「第七官界彷徨」の構成を予感させるものがある、と指摘されました。
 一方、尾崎翠は大正3年頃から8年頃にかけて短歌を発表していますが、林さんによれば、翠の短歌との別れは比較的早く、それを示す証拠として、37歳頃にかかれた随筆「もくれん」を挙げられました。この文章は大学時代の作歌の思い出を美しく綴ったものですが、その末尾近くに「これは私の劣ない歌が他人に朗吟された最初であった。そして恐らく最終の朗吟であらうと思ふ。」とあり、以後も翠は短歌を作ることはないだろうことを証している、というのです。
 翠の最初の短歌との別れは、小説「無風帯から」が『新潮』に掲載されたのを大学当局によって問題にされ、翠が自らの意思で大学を退学した事件がきっかっけです。大学をやめて歌の筆を絶った翠は、この学生時代の歌との別れを「もくれん」で回想しながら、これから先もう歌を作ることもないだろうと思ったのではないか。そこに林さんは翠の2回目の歌との別れを見ています。
 定型的な短歌との別れと、美しく幻想的なものとをたづね求めることとが、同じ一つのことの裏表を表しているかもしれない、との指摘は歌人としての林さんが翠の精神の深い部分までも鋭敏に感取しているようで、聴衆にとって大変刺激的でした。
 最後に、林さんは翠からの問いかけとして短歌の意味について話されました。翠にとって、短歌は心臓の思いをそのまま吐露するようなものであるのに対して、小説は心臓そのものではなく一回頭を通ってそこから構成するもので、翠は心臓そのままがある意味で短歌の良さであると同時に限界ととらえていて、センチさや抒情にちょっと距離を置きたかったのではないか。
 その翠が限界を感じていた短歌になぜこだわるのか。これは歌人にとって大きな――ある意味では永遠の問題であり、そのことを翠から問いかけられているように感じると語りながら、林さんは「短歌は限界のあるものなんだけど、やはり自分の思いをいま何かに表わすとしたら、短いかたちによって表わすことが今の私の一番使いやすい手段であり、自分にとって一番それが行きやすい道であるように思う」と話されました。

※林あまりさんの講演の詳細は、尾崎翠フォーラム実行委員会発行の『尾崎翠フォーラム・in・鳥取2002報告集』(11月刊行予定)に収録します。