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過去のフォーラム 2001

Osaki Midori Forum in Tottori

 

◆小倉千加子さんの講演『尾崎翠の生涯と作品』より◆(要約抄録)

『尾崎翠の生涯と作品』を講演する小倉千加子さん

 ジェンダー心理学者の小倉千加子さんの講演は、ジェンダー論の観点から尾崎翠の実人生を決定づけた3つの別れに注目し、それが彼女の作家としての活動や作品に及ぼしている深い影を読み解き、これまでなされてきた翠の生涯と作品の解釈を一新する内容でした。
 たとえば、翠の作品に兄との「近親相姦的願望」があるとの見解を疑問視し、それは兄に対する「同一化」であったと心理学の用語で説明。さらに、彼女が父を失った悲しみからくる「喪反応」として、父なる「性別」を自分のなかに「取り入れ」、いわばジェンダーを越境して男性のアイデンティティで生きてきたとの解釈を示しました。
 また、翠の実人生についても、帰省後の後半生を不幸な色調で染め上げる見方に対して、そうではなく彼女は早死にした妹の子どもたちを引き取り肝っ玉母さんのように生き返ったのであり、そういう意味では生活者として決して不幸ではなかったとしています。
 この小倉さんの解釈は、稲垣真実氏らの旧来の解釈を否定して尾崎翠の実人生と代表作を現代によみがえらせた、浜野佐知監督・山崎邦紀脚本による映画『第七官界彷徨―尾崎翠を探して』に通ずるもののように思われます。

◇「翠は12歳のとき父親をなくし、このとき受けた悲しみを彼女は一生忘れていない。7人兄妹の翠は上に3人のお兄さん、下に3人の妹がいたが、父が死んだとき兄たちは仕事や進学で鳥取にいなかったため、長女の翠には兄妹のなかで家長という意識すらあったかも知れない。ここですでに彼女は性別を越境している。彼女には兄に対する非常に強い同一化があり、これを兄との近親相姦的願望と言うのは違うと思う。しかも、彼女は父を失った悲しみからくる喪反応として、早くも12歳にして父なる性別を自分のなかに取り入れている。彼女の生涯には3つの別れがあるが、最初の別れがこの父親との別れだと私は位置づけている」。
◇「2つ目の別れは松下文子との別れで、文子との関係は女子大の同級生があたかも恋人であるかのごとく同居する“ボストン・マリッジ”に近い。文子は翠の秘書兼マネージャー、奥さんといってもよく、翠にとって最高に幸福な5年間だった。文子の結婚による別れは決定的で、翠の頭痛と頭痛薬ミグレニンへの依存症の原因としては文子との別離が大きい。このひとりぼっちで傷心の、もっとも苦しく孤独な時期に、当時の日本の文学界の最高峰の小説である『第七官界彷徨』と『歩行』を書いた。しかし、『こおろぎ嬢』の頃から、翠は地に足をついて生きていくことができなくなっている。」。
◇「3つ目の別れは高橋丈雄との別れで、東京駅で別れ際に翠が列車から身を乗り出し情念の塊のようなものを高橋の瞳にぶつけ、これを10歳年下の高橋は愛執と呼んでいるが、私は違うと思う。翠は高橋を愛していなかったと思う。それよりも翠は何とかしてこの地上に常人としてとどまりたかった。そのため、束の間、少女に戻って1週間くらい2人きりで過したが、彼女の心を一番傷つけたのは、そこまで信頼して少女に戻って慕っていた高橋の裏切りだった。最後に、高橋からも兄からも“お前はもう一人では生きていけない”と宣告されて、絶望し切ってあきらめた。そして、東京での生活への最後の訣別のつもりで、高橋を見つめたのだ」。
◇「翠は郷里の鳥取で退院して普通の生活に戻った。自分の妹の子の甥や姪を育て、まるで別の人格を持ったかのように、普通の人、肝っ玉母さんのように生き返る。それは決して不幸ではなかった。東京で彼女の作品が再発見され、文学全集に収録されたと聞いたとき、彼女はもちろんうれしかったが、だからといってあの時代に戻りたいと思ったのだろうか。病院に運び込まれたとき、最後に“このまま死ぬのならむごいものだねえ”とつぶやいて大粒の涙をぽろぽろと流したという有名なエピソードがあるが、この言葉を本当に彼女が言ったのかどうか異論が出ているし、はたしてそうだろうか慎重にに考えないといけない」。