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過去のフォーラム 2001

Osaki Midori Forum in Tottori

 

◆加藤幸子さんの講演『尾崎翠の感覚世界』より◆(要約抜粋)

『尾崎翠の感覚世界』を講演する加藤幸子さん

 すでに『尾崎翠の感覚世界』(冬樹社、1990年)という先駆的な尾崎翠論を発表している作家の加藤幸子さんは、まず29年前の1972年に初めて翠の作品に出会ったときの新鮮な印象について話しました。
 つぎに、翠の反自然主義の過激な思想に触れ、また「文学的失跡」ともいえる「断筆」の意味について、彼女が鳥取に連れて帰られた頃は、日本が中国大陸に満州国を擁立した時期に当たり、彼女は「鳥取という地方でひっそり暮らしながら」、中央文壇を巻き込む国を挙げての戦争騒ぎを「かなり冷静に、むしろ皮肉な目で見ていたのではないか」と示唆。
 さらに、翠の代表作といえる『第七官界彷徨』や『歩行』をめぐって、「第七官界」というのは「霧のかかった世界」で、そこには「官能的なエロス」すら感じられると語り、それは匂い・音・視覚など複数の感覚が複合して醸し出す独特の世界であり、翠の作品に登場する「哀感」という言葉もこの複合感覚による「第七官界」を象徴する気分ではないかとしています。
 加藤さんは自著『尾崎翠の感覚世界』で、「第七官界」は「夢と現実との境に現われ、日常と非日常を一続きのものにする中間地帯」にあるとの見解を打ち出していましたが、この見方を講演でも繰り返し、それは綿密な構成・たくまざるユーモア・すばらしい文章力の結晶でもあると結論づけています。

◇「深尾須摩子や林芙美子と同席している当時の座談会の記録を読むと、尾崎翠は自然主義に対する批判と新しい手法についてかなり過激な発言をしている。形は散文でも言葉を惜しむことが大切だと。しかもそれでテンポを速く、小説から詩への逸脱ということを非常に思う、と話している。それは小説と詩とのはっきりしたジャンルの境界を越えようとする、彼女なりの意志の表明でもあると思う。自然主義文学についてはコテンパンで、自然主義的なものの考え方とか手法とか、あれで日本文学は腐ったと思うと凄い発言をしている。また当時の女性作家にも、心臓の洪水に陥っていると苦言を呈している。私は彼女が言っていることは正しいと思うし、小説家であると同時に日本では数少ない女性批評家の1人であると信じる」。

◇ 「第七感は独自の文学的境地を表現するためにつくった第六感を越えたもうひとつの感覚世界というべきものだ。小野町子が兄の一助氏の論文を盗み読みして、こんなに広々として霧のかかった世界が第七官界かと感じる。以後、霧という言葉が繰り返し作品ののなかに登場する。忘れられないような美しい場面だが、二助が床の間を実験室にして栽培している蘚のサロンで、蘚が花粉をまきちらすシーンがある。ここでは幻想的な霧のようなイメージがあって、それにさらに官能的な感じが加わってくる。第七官界の入口にはエロスの霧がかかっているのではないかと私は感じた」。

◇ 「『第七官界彷徨』は匂いのオンパレードでもある。それは不快な悪臭ではなく、ふだん眠り込んでいる感覚を目覚めさせる、私達の郷愁をそそるなつかしい匂いだ。こんなに沢山の匂いが登場する小説を日本でも外国でも読んだことがない。もうひとつ音の感覚もある。哀感という言葉がよく出てくるが、これはたとえば三五郎のピアノの音と淡いこやしの匂いがミックスして呼び起こす複合感覚で、哀感も第七感を象徴する気分ではないか。また視覚も大きさや形が入れ代わったりする。この入れ代わってしまうという現象も第七官界の特徴だ」。

◇ 「結論として、第七官界という世界に足を踏み入れると、日常ではごく当り前と思っていた感覚が崩れ落ち、すべての境界線が揺らぎ始める。それは狂気の世界に似ているが、『第七官界彷徨』と『歩行』に関する限り、それは神経がおかしくなった時点はでなくて、きわめて冷静なすっきりした頭の中でつかみとった第七官界というすばらしい世界、その感覚を小説化したものであると私は信じている。この作品は常識的な秩序を突き崩して書かれていて、座談会の発言にもあるように、彼女のかなり過激な思想のかたまりのような作品である。この何とも言えない穏かなバランスに満ちた世界と過激思想のかたまりが、非常に綿密な配慮と構成によって、それから巧まざるユーモアとすばらしい文章力によって見事に結晶したのが、この二つの作品ではないかと思う」。